味覚
2002年10月23日「あなたの作ったものは、私の味覚に合わない」
仲直りの意味も含めて、作った物を否定されてしまった。
甘党の僕が、彼女の味覚を考え、彼女の嗜好に合わせて作ったのだが、彼女の言葉を借りるならば「その考え方自体が私と合わない」らしい。
彼女は、他人に媚びて作られた物は、敬遠する傾向にある。
僕から見れば、逆に辛党の彼女が作る物は、何処か他人を寄せ付けない感じがする。
他人が賞味する以上、作った物の味を調える必要はあると思うのだが。
彼女に、彼女が作った物を賞味した周りの反応を聞くと「半々」と答える。
そうなのだ。
他人に歩み寄る事無く、自分の味覚のみを信じて作られた彼女の物は、素材によっては絶妙の味を生み出す。
付き合い初めの頃、お互いの味覚を譲らなくて、あれこれ言い合った頃もあったが、生まれてから今まで築き上げた味覚が、簡単に変わる筈も無かった。
お互いの共通点を、未だに模索中である。
「これじゃお金は取れないよ」
彼女の物を賞味した後に、僕は必ず苦笑いをしながら言うのだが、彼女の答えも必ず決まっている。
「自分が良いと思えない物は作れない。お金が貰えるなら別だけど」そういって微笑む。
彼女は、味を調える事を媚びているというが、僕はそうは思わない。
「赤」と言った時に、自分が意図した色を伝える為に、必要な説明するのが味を調える行為であって、それは媚びる事とは別な筈だ。
言葉が足りなくて、自分の意図した「赤」が伝わらないまま「ピンクに近い赤」や「ワインレッド」で賛辞を受ける事の方を僕は避けたい。
どちらにせよ、お互いの価値観が違う以上、二人とも、過度の歩み寄りは出来ないのは判っている。
お互いの、持ち味を生かした物を作るしかないのだ。
「お腹空いた。何か食べに行こうよ」
彼女の言葉で、空腹だと気付く。
現実の二人は逆だ。
僕が辛党で、彼女は甘党だ。
二人とも料理は出来ない。
お互い食事の味覚と、文学の嗜好、執筆作品の味付けが逆である事に、どこか変な気もするが、人間は無意識の内に、バランスを取るものなのかもしれない。
そうでないと、価値観の違う二人が、一緒に居続ける事が出来るとは思えない。
お互いに、生きていく上で相手が必要なのだ。
「駅前の定食屋に行くか」
「そうだね、私もそう思ってた。歩いて行こっか」
「俺もそう思っていたよ」
お互い、自然と笑みがこぼれる。
どうやら、僕が書いた作品は不評でも、彼女と仲直りはできたみたいだ。
定食屋へ向かう道で、二人は自然と手を繋いで歩いていた。
「手を繋いで歩きたい」と思うのは、味覚、嗜好、価値観の違う二人の、数少ない共通点だ。
僕は、この事を大切にしたいと思った。
仲直りの意味も含めて、作った物を否定されてしまった。
甘党の僕が、彼女の味覚を考え、彼女の嗜好に合わせて作ったのだが、彼女の言葉を借りるならば「その考え方自体が私と合わない」らしい。
彼女は、他人に媚びて作られた物は、敬遠する傾向にある。
僕から見れば、逆に辛党の彼女が作る物は、何処か他人を寄せ付けない感じがする。
他人が賞味する以上、作った物の味を調える必要はあると思うのだが。
彼女に、彼女が作った物を賞味した周りの反応を聞くと「半々」と答える。
そうなのだ。
他人に歩み寄る事無く、自分の味覚のみを信じて作られた彼女の物は、素材によっては絶妙の味を生み出す。
付き合い初めの頃、お互いの味覚を譲らなくて、あれこれ言い合った頃もあったが、生まれてから今まで築き上げた味覚が、簡単に変わる筈も無かった。
お互いの共通点を、未だに模索中である。
「これじゃお金は取れないよ」
彼女の物を賞味した後に、僕は必ず苦笑いをしながら言うのだが、彼女の答えも必ず決まっている。
「自分が良いと思えない物は作れない。お金が貰えるなら別だけど」そういって微笑む。
彼女は、味を調える事を媚びているというが、僕はそうは思わない。
「赤」と言った時に、自分が意図した色を伝える為に、必要な説明するのが味を調える行為であって、それは媚びる事とは別な筈だ。
言葉が足りなくて、自分の意図した「赤」が伝わらないまま「ピンクに近い赤」や「ワインレッド」で賛辞を受ける事の方を僕は避けたい。
どちらにせよ、お互いの価値観が違う以上、二人とも、過度の歩み寄りは出来ないのは判っている。
お互いの、持ち味を生かした物を作るしかないのだ。
「お腹空いた。何か食べに行こうよ」
彼女の言葉で、空腹だと気付く。
現実の二人は逆だ。
僕が辛党で、彼女は甘党だ。
二人とも料理は出来ない。
お互い食事の味覚と、文学の嗜好、執筆作品の味付けが逆である事に、どこか変な気もするが、人間は無意識の内に、バランスを取るものなのかもしれない。
そうでないと、価値観の違う二人が、一緒に居続ける事が出来るとは思えない。
お互いに、生きていく上で相手が必要なのだ。
「駅前の定食屋に行くか」
「そうだね、私もそう思ってた。歩いて行こっか」
「俺もそう思っていたよ」
お互い、自然と笑みがこぼれる。
どうやら、僕が書いた作品は不評でも、彼女と仲直りはできたみたいだ。
定食屋へ向かう道で、二人は自然と手を繋いで歩いていた。
「手を繋いで歩きたい」と思うのは、味覚、嗜好、価値観の違う二人の、数少ない共通点だ。
僕は、この事を大切にしたいと思った。
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