久しぶりの休日。
私は新宿へと足を運んだ。
ノスタルジックな、感傷に浸る事を毛嫌いしていた私が、ゴールデン街へと足を運んだ。
本気で日本を変えられると、若さに任せて突っ走っていた頃、
よくココで、メンバーと酒を酌み交わした。
過ぎ去りし時代の、思い出の場所だ。
一哉の情報を探す為と、自分に言い訳するものの、実際は自分で消した過去との繋がりを探しているのだ。
そこで、思わぬ人物と遭遇した。
G。
民改の中心的存在だったGが、焼酎を浴びるように飲み、酔いつぶれていた。

「おい!」
私が声を掛けると、焦点の定まらない眼を向け、じっと私の顔を見つめた。
声を掛けた人物が、私だと理解したらしく、目に見えて酔いが醒めたようだ。
「ウサギ…」
「おい!どうしてお前が、公安特殊部隊を率いているんだ!
俺達に説いていたあの言葉はウソだったのか!」
「ウソなものか!ただ…」
「…ただ?なんだ?」
「ウサギは知らなかったかもしれないが、あの頃の俺は、内ゲバで命が危なかった」
「内ゲバだからって、命までは…」
「…お前、本気で言っているのか?本気で女帝尾上が、
命までは取らないと言っているのか?」
その言葉に、私は口をつぐんだ。
「お前も知っての通り、俺は当時、お前が付き合っていた遼子に思いを寄せていた。
麻奈美から付き合う事を強要された時、好きな人がいると言って断った。
それ以後、俺は明らかにメンバーから孤立させられていった」
「大倉は、味方になってくれなかったのか?」
「あいつはダメさ。尾上から一哉との仲を取り持つ事を条件に、女帝側についちまった。
結局、俺が抜けた後、尾上が一哉との仲を取り持たなかったのは大方の予想通りだが、
恋する乙女には、約束が反故にされる事は予想できなかったらしい」
「でも、どうして特殊部隊に…」
「そこさ。政府は俺達の猛攻に手を焼いていたのは事実だ。
機動隊の人員が減る割に、新規の隊員が育つには時間が掛かる。
そこで考えたのは、改革側のメンバーを機動隊員にしちまう事だ」
「まさか…」
「まさかも何も、現に俺が公安にいるんだから本当さ。犯罪歴の抹消と、
新設部隊の部隊長になれると言われ、内ゲバで行き場を失っていた俺は、政府に寝返った訳さ」
どこか、自嘲気味に話すGの様子を見ると、相槌を打つのもためらわれた。
「新設部隊長とは言うものの、フタを開ければ体の良い小間使いさ。
改革メンバーからは裏切り者。
公安からは、過激な現場の第一陣として派遣させられる。まあ、死して骨を拾う者ナシって所さ」

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

まだテーマがありません

この日記について

日記内を検索